■たまにはフリーもいいよね 京王帝都グリーン車もどき Scale 1:150/Gauge 9mm 2008.10.5 完成 フリーランスをがんばらないための隠れ蓑に使うのはあんまりいいことではないと思いますが、しかし一作一作に奈良の大仏でも作るような気合いとこだわりを注ぎ込んでいてはいつまで経っても完成作なんぞ出ないであろうことは容易に想像できます。どんなに凝ったって完成しなければジャンクも同然です。どうせ完璧に妥協のないスケールモデルが作れるわけでもあるまいし、などと云うとまた逃げ口上みたいですが、例えばスランプや未完成病を脱するためのひとつの手段として、実車をなぞる必要のないセミフリーやフリーランスをほどほどのところで仕上げてみるのは無益なことではなかろうと思います。 要は私自身が未完成病患者だったわけで、この前ひょんなことから井の頭線をひとつ、期限付きで作らないかということになったために、このきっかけに絶不調から抜け出さねばならぬと上記を実践するようにして作った久々の完成作がこれです。じゃあ調子を落とせるほど以前は調子がよかったのかとか、元々お前の作るものはセミフリーばかりではないかといったツッコミは受け付けませんので悪しからず。 (Updated 2008.10.21) ■材料■ ・鉄コレ第6弾 近江鉄道モハ202 ・鉄コレ第2弾 フリー・2001の窓ガラス ・鉄コレ第4弾? DT10台車 ・GM [70-5] ガーランド・T型ベンチレーター ・GM [308] クモハ12040+クモニ13キットのヘッドライトと標識灯 ・TOMIX PT42パンタ ・プラ板・プラ帯 ■使用色■ ・GM鉄道カラー[30]東急ライトグリーン(車体) ・GM鉄道カラー[35]ダークグレー(屋根) ・Mr.カラー[29]艦底色(車内) ・Mr.カラー[40]ジャーマングレー・[42]マホガニー・[43]ウッドブラウン(ウェザリング) ■レタリングなど■ ・GM [6412] 車輛マーク 京成・京王 ・GM [S-422] 京王ステッカーU ■工作について■ 京王帝都は地味な割によく見ると綺麗な車がたくさんいて、それなりにクセもあり、私自身もあまりよくは知らないながら通学で井の頭線を使うので気にはなる、即ちまだ知識はないが興味はあるという、今回のような場合にはお誂え向きにも程がある好路線です。 で、大小取り混ぜいろいろあるグリーン車の中から、ここでイメージソースにしたのは戦後の京王帝都時代、2灯ヘッドライト化された後の井の頭線吊掛車。1400形とか1700形とか、あの辺の比較的おとなしいスタイルの電車です。確固たるプロトタイプはないので、ディテール加工は余ッ程目立つところだけにしました。両運1輌でまとめようということは最初からそう考えていたので、初めは単行でも自然な帝都電鉄100形タイプにしようと思っていたところが、でもプレスドアじゃあんまりだなということに途中で気がついて、ドアを抜きたくなかったのでこういう中途半端なことになりました。 1760形という両運車がいたことは当時まだ知らなかったので、後から考えてあれにしたらよかったかなとも思うものの、プロポーションが全然違うし、だいいち形式にこだわりだしては当初の方針から逸脱するのでここはこれでいいことにします。そういうことにしておいて下さい。 ■車体 両運に改造します。ただし今回はいつものような切り継ぎではなく、無駄な殺生はなるたけ避けようという方針のもと、プラ板やプラ帯を切り貼りして行いました。即ち側面ならば、 @運転台を増設したい部分の腰板を、乗務員扉になる分だけ切り抜く。 A元の窓部分の左右をプラ板で埋める。 Bプラ板で作った乗務員扉をはめ込む。 という手順です。まァ単純ですね。間違えて元々あった乗務員扉まで抜いてしまって作り直したのは内緒。 前面も同じような感じで、こちらは逆に貫通扉を抜いてから何もなかったかのように埋め直します。前面のウィンドシル・ヘッダーは変にとっておこうと考えると綺麗にできないので、ケチケチせず先に全部削ってしまい、後からプラ板で新製。0.3mmでもまだ厚いので、少々危険な手ですが接着してから薄く削りました。 アンチクライマは以前どこかで試したのと同じで、プラ板の上に伸ばしランナーを4本並べて接着したもの。テールライトはどこから持ってきたかもう忘れましたが、たぶんGMの国電キットあたりの余りパーツでしょう。 帝都加工中… 窓ガラスパーツは、本当は側面窓を下段だけアルミサッシにした姿が独特でいいなと思ったんですが、今回は〆切もあり、塗り替え作業が泥沼に陥ることは想像に難くなかったのでやめて、そのまま使いました(印刷の剥げていたHゴム部はマーカーでタッチアップ)。増設した乗務員扉には窓枠を表現しなかったので、第2弾のフリー2001用乗務員扉を塗り替えて使っています。 前面窓はどうしようか迷った挙げ句、側面窓を3枚切り離してはめ込むだけという安直な方法に。窓柱は細切りした0.3mmプラ板を、断面を見せる形で使っています。側面よりちょっと柱が細くなりますが、まずまず違和感のない程度です。ただはめ込みは(主に左右幅が)かなりタイトで、窓枠を若干削り込んでようやく収まりました。 運転台窓はせっかくなので、戸袋窓の桟を削り、コンパウンドで磨いて1段窓にしました。表面がでこぼこしてここに載せている写真で見てすらバレバレな程度の仕上がりですが、やらないよりは多少…といったところ。初めは中央窓もそうするつもりでいましたが、2枚となるとさすがに粗が目立ちすぎる恐れがあったのと、当時生活のリズムが滅茶苦茶で体力が慢性的に足らず、作業中に心が折れかけたのでやめました。 ■屋根 京王帝都の機器配置の文法を全然知らないので、そのままでもいいかなぁとは思ったものの、作るにあたって写真で見た車がみんなガラベンだったので、ベンチレータのモールドを削り、GMのガラベンを同じ場所に付けました。ただ手許にパーツの在庫がなく、その当時それを買うだけのお金もなかったので、以前作った蒲原クハ10もどきの屋根から引っぺがして使っています。これであちらはいよいよもって廃車体同然となり、可哀想なことをしましたが、まァいいんです、どうせクハ10は後でちゃんとキハ04から作りますから。もどきの方は文字通りの廃車体として仕上げなおしてもいいし。 上から加工順 2灯ヘッドライトは本車のハイライトで、これがあってようやく京王帝都に見てもらえるという、そのギリギリの境界を操る重要な部品なので抜かりなく作ります。とはいえGMの国電用ライトの脚を片方ずつ切って、後ろをプラ板で繋いだだけなので工作は至って簡単。2灯でさえあればいいのです、ええ。接着面積が稼げたので、強度もそれなりに出たと思います。 ■床下 両側ダミーカプラーにするくらいで、特に手は加えません。台車はDT10を削って1400形の変な一体鋳鋼製台車みたいにしようと思いましたが、今のところはそのまま使っています。車内パーツも片運用のままです。こっちはいずれ、ちゃんと切り継ごうと思います。 ■塗装〜 車体は一色塗りなので大変楽です。ルマングリーンが近いという話も後になって聞きましたが、塗った時にはそんなことは知らないので、GMカタログの「(30)近」の文字を真に受けて東急ライトグリーンに塗ったところが案の定「これなんて目蒲線?」といった姿に。大丈夫、レタリングでなんとか化けてくれるさ…と信じつつサボやインレタをべたべた貼ったらなんとか、あぁよく見ると目蒲線じゃないねぐらいにはなりました。いやはやあぶなかった。 屋根はなぜだか明色のイメージがあったのでGMのダークグレー。仕上げのウェザリングはたしか屋上がマホガニー+ウッドブラウン、床下がウッドブラウン+マホガニー+ジャーマングレーだったと思います。この仕上げのジャーマングレーが結構効きます。グッと色調が落ち着いて、お洒落な感じに。お洒落な汚れってなんやねんという気もしないではないですが。 ただし場所が場所なので、すっごい剥がれます。ぬるぬる剥がれます。こればっかりは仕様がないので、目も当てられないようになったらひと思いに塗り直して、ついでに動力化もしようと前向きに考えています。 仕上げ中に窓柱1本折れたよ! サボは3000系用の方向幕「渋谷-吉祥寺」を紙に貼ったものをゴム系で接着。側面にもサボは付いていたみたいですが、ちょうどいいステッカーがなかったのでやめました。 1400形のイメージがずっと念頭にあったので車番は1400番代の空番(空いてるよね?え?空いてない?)に押し込み1410としましたが、よくよく考えればフリーランスなんだから形式番代からして架空の枠に収めた方がいろいろフッ切れてよかったなあ。こういうつまらないことで人に突っ込まれて返答に窮するのは面白くないですし。小っちゃな標記で、かつヘッダーと雨樋の僅かな隙間に入るので目立たないのが救いですけども。 ここにしても腰板の社紋・K.T.R.ロゴにしても曲がったりずれたりして何度もやり直しましたが、今回はものぐさの私には珍しくちゃんとパーツを中性洗剤で洗ってから塗ったので、食い付き抜群、テープと一緒に塗膜も剥がれてくるようなことはありませんでした。要するにいつもはあるということですね。 そんなこんなで出来上がりました京王帝都もどき。もとより京王フリークの人に見せるための作品ではないので気楽も気楽、それに仕上がってみるといい具合に種車のイメージも消えていて、おおいいじゃんと自讃しつつその勢いで次の2輌3輌へカッターを走らせることとなったのでありました。めでたしめでたし。 こればっかり作っていたお蔭でサークルの雑誌に出す原稿がちっとも進まず、あっちこっちに迷惑をかけた挙句に結局落としたというようなことは本作の意義と何の関係もありません。猛省しております。 井の頭線はこんなところ走りません! (おしまい) ▲もどる |