悪乗りプラスティック
クモハ42001
Scale 1:150/Gauge 9mm


ホントは未完なんですが


ここにこうやって製作メモを書くのも随分久しぶりだなぁと思って見返してみると、実に1年3ヶ月あまりの空白が生じていたわけで、なぜそんなに長いこと放っておいたかといえば、単純に1輌の完成車も出ていなかったのです。その間にも改造待ちの鉄コレは依然、机の両脇に山をなして日夜恨みがましく私を見つめていたわけで、この沈黙を破る一作が鉄コレでなくGMキットに出自を有するというのはそんな彼らに申し訳が立たない気もするのですが、しかし本作で工作の方法にひとつ標準ができた事によって今後、鉄コレ工作に寄与する所も決して少なくはないでしょう、たぶん。

…学校から寄ったGM下北沢店で、吊るされているクモハ43のキットを見ていて、急にムラっときて衝動買いしたのはいつの事だったか、去年の夏だったか、事によると一昨年だったような気もする。最初は、定期的に襲ってくる「やっぱ板キットだよな…」という思いに駆られただけの話で、「まぁ、継いでクモハ42にでもするか…」くらいの気持で特にこだわる積りもなかったのですが、しかしクモハ42といえば引退間近の2002年、滑り込みセーフで何とか乗る事のできた、私にとっては営業線上で乗車経験のある唯一の旧国。去年の10月、いざ本格的に手を着けてからはあれもこれもと気になり始め、結局そこからも3ヶ月強の時間を要したのでありました。


……と、このリード文を打ち込んだのが2010年の1月。そこで踏ん張って上げときゃいいものを、さらに2年半も寝かせておくことになったのは特段深い理由もありませんで、微妙に未完成な部分があったために先送りしているうちにいつしかなんとなくサイトの更新自体が疎かになり、そのまんまになっていたわけです。そうこうするうち、地味にあちらこちら持って行っていたので塗装も微妙に剥がれてきて、完成前からレストアが必要な事態に相成ったりしてもうなんだかアレですが、まぁ外に持ち出したりするということはほぼ出来ているわけで、この機会にアップしようという次第であります。

以下の本文も途中までは2010年のものですので、念のため(別に念押しする必要もないんですが)。
(Updated 2012.09.18)



材料
・GM [152] クモハ43
・トミーテック [TM-09] 鉄コレ用20m級動力ユニット
・TOMIX [0201] PS16形パンタグラフ
・イエローサブマリン プラストライプ(t0.14×0.5)
・伸ばしランナー
・その他、ジャンクパーツ多数
使用色
・GM鉄道カラー[2]ぶどう色2号(車体)
・GM鉄道カラー[35]ダークグレー(屋根)
・Mr.カラー[40]ジャーマングレー(屋根)
・その他サーフェイサー、各部色差しなど
レタリングなど
・GM [6301] 車輛マーク 40・42・51・52系
・GM [68-5] 車輛マーク 区名表記 東海・西日本・四国・九州
・鳳車輛製造 [003] 電車標記ステッカー



工作について

やはり自分で見た車輌だけにその時の形態が欲しいということで、車番はクモハ42001、時代設定は最晩年の2002年頃とします。当時のRMに特集号があるので、資料にもまァ困りません。
キットと同系車ですので大筋はそのまま使えるのですが、元々の形態差や後天的な改造によって、主に車端部を中心にかなりの差異が出ていますので、それを執拗に追いかけていきます。あと、1輌で走るものなので、私にしては珍しく動力も仕込むことにしました。


■車体

まずはクモハ43から42にせねばなりませんから、非運転台側に乗務員扉を切り継ぎます。リベット付きの車体なので、継ぎ目の処理はなるたけしたくないと思い、客ドアの端に合わせて継いでいます。乗務員室脇にあるルーバーは、不要なので早めに削っておきます。

さて、クモハ42001の場合、車体裾のリベットが1列なのが製作上の障害のひとつであろうと思います。この点や、前面に幌が残っていた事を考えれば、晩年まで同僚として働いていた42006の方が圧倒的に作りやすいし、面構えも正直そちらの方がカッコいいのですが、ここはやはり実見できた001をという妙なこだわりのために、しばらく悩むこととなりました。

最初は単純に2列リベットを半分削って1列にしようと考え、よっしゃヤスリ掛けんべと思ったものの、実際モールドを目の前にして、これが思った以上に苦難の道である事が判明。これを片方だけ削りつつ、もう片方をそのまま残し、かつ全体を綺麗に仕上げるのは今の私には荷が勝ちすぎると思い、あえなく断念(今にして思えば、シルからリベット1列目までの幅に割り箸でも切り出して治具にすればよかったかも…)。
次に実車のリベットが車端近くはほとんど消えていた事を盾にとり、2列のままでもそこを再現すれば感じは出んべ! と車端付近だけ削ってみましたが、みっともないのでこれも却下。
最終的には「発想の転換」と称して、すっぱり全部削ってしまいました。変といえば変ですが、実車でも相当消えていた部分ですし、特に同系車と並べる予定もないし、シル・ヘッダーなんかに比べれば大勢に影響もないので、これはこれでひとつの手かと思っております。インレタも貼りやすくなったし!


サイドビュー(長い)

で、ここまではまぁいい。問題は前面です。実車のパンタ側前面は幌も幌枠もなくなっており、おまけに貫通扉の下半が弘南鉄道よろしく埋め込まれて、いささか締まりのない面構えになっております。非パンタ側はといえば幌枠付で原形には近いものの、こういう前面もキットにはありません。腹をきめて、こまごまとした細工に取りかかるほかありませんでした。

最初にパンタ側前面から。キットの配管付前面をベースに、まずは幌取付用の穴2ヶ所を伸ばしランナーで埋めます。その後、扉下半を埋め込んで外板とツライチにするため、その部分を四角く切り抜いてから(この時点で下の穴を埋めた意味がなかったことに気付きますが、気にせず作業を続けます)プラ板で埋め込みます。裾の切り欠きも不要なので、これもプラ板で埋めてしまいます。
これで大筋は完了。あとはディテール加工ですが、この辺の作業をする頃になると、ひとつ本作での明確な指針が固まってきていました。
即ち「オールプラ」。

要は巷に溢れる金属パーツに敢えて背を向け、とにかくできうる限りプラでディテール表現をしようという試み(ってほど新奇なことでもないと思いますが)。ただパンタや動力装置までプラで作るのはちょっと無理なので、そこは普通に市販品を使って「ほとんどプラ」作品として仕上げることにしました。
(2012.09追記:今後模型を増やしていくうえで全部をギンギンのフルディテールにするのも無理だし、今のモデルはモールドもよくできていて色差しで充分細密感が出るので、それと釣り合いをとるにはいたずらにいろいろ立体化するよりプラで「モールドっぽく、素組みっぽく」作った方が結果的には幸せなのではないか? というわけです。苦労は表に見えない方がかっこいい、とか考えてもいたんだと思いますが、それを完璧に隠せるまでのウデもなく結局のところ見え見えです)

と、大上段に構えてはみたものの、やってることは伸ばしランナーと細切れのプラストライプをぺたぺた貼るだけなので、至って地味な工程です。ということで、追加したディテールを列挙するだけに留めておきます。

・貫通扉下部の靴ズリ
・埋め込まれた貫通扉下部を左右に渡してある帯材
・連結器胴受の接続する金具
・運転台窓下の通風器
・テールライト上のステップ
・貫通扉上と左右の手スリ
・ワイパー(単なる線材)
・配管とその取り込み口(屋上と接続)
・パンタカギ外し線(屋上と接続)
・乗務員扉上半の「額縁」表現


工作中の状況


あっ、雨樋縦管の塗装ハゲてる…

次に非パンタ側。パンタ側と違って、大筋の合っているパーツもありませんので、どうしようかと悩んだ挙句、幌枠がある! という理由から連結面側妻板をベースに選びました。
が、パーツの窓は向かって右が2段窓、左がHゴム窓。扉も幅が広くて、42001の両側木枠1段窓+額縁付貫通扉という仕様とは見事に全部異なります。面倒ですが、仕方がないので加工します。

まず両側の窓は一旦窓枠を削り、プラ板をはめ込んでから中をくり抜くことで1段窓に改造。ドアはこちらも下半は埋め込まれているので、その部分は0.14mm厚のプラストライプを貼っただけ。上半は一度くり抜いた後、運転台側のパーツから貫通扉上半を切り取ってきてはめ込み。この際、縁だけ元のまま残して段差をつけることで、額縁状の形態を表現しています。
テールライトも運転台側のパーツのもので、削ぎ取ってきて接着。運行灯は適当にやっときゃいいものを、パンタ側と表現を揃えようとするあまり、これも貫通扉と同じようにくり抜きとはめ込みで作っています。ここまで来るとただの意地っ張りですね。

細かなディテールは、パンタ側と同様伸ばしランナーとプラストライプが中心。パンタ側ほどゴテゴテしてないので、こちら側独特というものはそんなにないのですが、渡り板はその辺に転がっていた鉄コレの側板の切れっ端から削り出しています。それと幌枠の上の幌吊りは付けたかったのですが、プラであの細さと形を出すのが困難なうえ、手を掛ければ掛けるほど損壊した際の残念さが際立つことは明白なので、せめてもの慰みということで、幌枠の上に「謎の突起」を付けてお茶を濁しました。


非パンタ側から

あぁそうだ、プラストライプによる額縁表現は4ヶ所の乗務員扉にも施しています(切り出し済の0.5mm幅のものでは太すぎたので、太いプラストライプから切り出し)。ついでにパンタ側の1ヶ所だけ乗務員扉窓が2段になっているのも、プラ板で桟を追加して表現しました。その脇には伸ばしランナーで梯子を付けたのですが、伸ばしランナーだけに太さに微妙な誤差があり、1ヶ所飛び出しすぎたのを削ったら今度は削りすぎて、ほとんどないが如き結果になってしまいました。


ひつこくプラでやっております

■屋根(本文ここから2012年)
いやー元気だなァ2010年の俺。なんだろうなー、やっぱどこかで一歩を踏み誤った瞬間があったんだろうなー…
さてそれはいいとして、JR化後の仕様なので無線アンテナが必要です。最初はKATOの分売パーツでいこうと思ったのですがなんだか(もう憶えてないんですが)うまくいかなくてGMのクモハ123用を持ってきました。アンテナの根元からは運転台屋上へケーブルが伸びているので、伸ばしランナーで作っています。
そのほかの配管は、母線や作用管はキットのモールドそのまま(実車とはちょっと違いますが)。避雷器への配管やパンタカギ外し線は伸ばしランナーで、カギ外し線は屋根の端で山型の台座に一度のぼってから前面へ下りるようになっているので台座をプラ板で追加しています(実物は抜けているんですがそこまではできませんでした)。全体に既存のモールドに馴染むように意識したのですが、いかがでしょう。

避雷器は何のパーツだったか忘れましたがプラ板の台座を介して取付。屋根端のステップはキットでは一体モールドなのですが、削ってクモハ51キット付属のプラパーツに替えてあります。
ヘッドライトは一時はワンポイントとして金属パーツにしようかと思ったものの、取付がうまくいかなくて結局何を思ったか鉄コレ用(4弾?)を使用。キットのパーツは使いたくないけど、「ほぼプラ」の不毛な意地は捨てきれなかったんでしょう。
パンタは素直に市販品で、晩年仕様なのでTOMIXのPS16を使っています。


モールドっぽくなったかな

■床下
キットの床下は使わずに、鉄コレ用の動力ユニットにDT12台車枠と第9弾の床下機器を取り付けて使用します。車体側も動力がはまるようにウラのリブを削り取り、片側3ヶ所ずつプラ板でツメを作ってスナップで着脱できるようにしてありますが、あんまり着け外ししてると接着した部分が割れそうで怖いので、できるだけ避けたいところです。
機器の並べ替えとかは一切してなくて車体に対してあまりにおざなりな気もしますが、まァそこまで変でもないのでよいでしょう。だめかな。


一応ちゃんと外れます

■塗装〜
車体は定石通りのぶどう色2号、屋根は実車にあわせてダークグレーに両端だけをジャーマングレーに塗り分けています。ウェザリングもいつものように、屋上・床下とも缶スプレーで行ないました。
標記はGMのインレタで、車番と所属標記はいいのですがATS標記やエンド標記はリベットと被って貼りづらいので一度デカールに転写してから貼付。自作の「宇部新川/雀田⇔長門本山」のサボと、鳳車輛製造の優先席表示やワンマン表示を貼って仕上げとしました。



さて、仕上がってしまいました。じゃあ冒頭で「実は未完成で…」と書いたのは何なのかというと、クモハ42は両運車なので非パンタ側妻面に検査表記や形式標記が入るのです。そのインレタが手に入らなくていまだに貼ってないままなので、その点だけで一応「未完成」ということになっているわけですが、既に2年半を未完成のクモハ42と共に過ごした今になってみると、もうこのままでいいかな…と思ったりもしています。


でもやっぱりあった方がカッコいいよな…


(おしまい)

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